※本記事はコメントを頂き2024年7月10日に修正しました。
こんにちはAlphaです。
「ネットは誤情報だらけである」一般的に言われていることですが、自分が調べる分野をある程度わかっていなければ、誤情報を見抜くことはできません。
ロレックスは「実用時計の最高峰」と呼ばれている通り、実用的に使える強さを持ち、また圧倒的な認知度で高級時計として君臨しています。
年間に100万本以上が生産されていると言われており一般的に考えたら圧倒的大ヒットの出荷数ですが、それでも供給が追いつかず、欲しい人はマラソンするという異常な状態が続いています。
一口に時計と言っても、ステンレススチール、貴金属、風防、ベゼルといった多くの部品から構成されており、それら一つ一つの部品はロレックスが研究を重ねた「材料工学」の結晶であり、細かいところまで理解するのは実は簡単ではありません。
ロレックスが自分たちでは多くを語らない企業であることにも起因し、ネット上には「あまりに酷い誤情報」が氾濫しています。
それも個人ブログではなく、有名な二次販売店の記事だから笑えません。
直接彼らが販売しているロレックスの品質には影響しないとは言え、私はそんな二次販売店からは買いたくないですね…
今回の記事を読んでから「ロレックス サファイアクリスタル」で検索して色々な記事を見比べてみてください!
それでは本題に入りましょう!
サファイアクリスタル?サファイアガラス?
サファイアクリスタルとサファイアガラスという呼称が二つあることが、サファイアクリスタルの理解を妨げています。
「透明といったらガラス」「安価な時計には今もミネラルガラスが使われている」ことからサファイアガラスと呼ばれることもありますが、ロレックスは公式に「サファイアクリスタル」と呼称しています。
少なくともロレックスについて話す際は「サファイアクリスタル」という呼称が唯一の正解なのです。
ただし「ロレックスに関してはサファイアクリスタルという呼称が正解」なだけであり、
これは「サファイアクリスタルがサファイアガラスに比べて優れている訳ではない」ということに注意してください。
例えばCASIOは「サファイアガラス」と表記していますが、使用している素材はサファイアクリスタルと同じく合成サファイアであり、同じものなのです。
「一般的な時計には風防にガラスが使用されていること」「無色透明の硬いものと言えばガラス」というイメージがあることから、便宜的にわかりやすく「サファイアガラス」と公式に呼称しているものと推察します。
サファイアクリスタスはサファイアであって決してガラスではない!
「サファイアクリスタル」という呼称をしているものの、サファイアクリスタルは「クリスタル(=水晶)」とは関係なく、「結晶」という意味で使われており、「サファイアの結晶」という意味なのです。
つまり、「サファイアクリスタル」は単純にサファイア(人工)なのです。
ではガラスとは何なのでしょうか?
辞書通りに言えば、シリカ(SiO2)を主原料とした、個体のことです。
「ガラスは液体である!」という有名な俗説があるのですが、これはガラスが結晶構造を持たない故に始まった俗説であり、実際には「アモルファス構造」であると現在では言われています。
つまり先ほどの説明にこれを加えると、「ガラスとはシリカ(SiO2)を主原料とした、アモルファス構造の個体のこと」と言えます。
この辺は結構難しいので興味のある方は調べてみてください!
そもそもサファイアって何ですか?
サファイアクリスタルが、ガラスではなく、単にサファイアであることはわかったけど、じゃあサファイアって何なの?ってなりますよね。
サファイアはコランダムという鉱物の一種で、ルビー(赤色)以外のものを指します。
つまり、サファイアとルビーは同じ種類の鉱物であり、色が違うだけなんですね!
そう思うと、ポケモンがルビー・サファイアだったのにも深い意味を感じますね…
高級時計に使用されるサファイアクリスタルとは?
ここまででサファイアクリスタルがサファイアであり、ルビーと色違いであるということがわかりましたね。
もう少し詳しく見てみましょう。
サファイアといえばまず頭に浮かぶのは宝石としてのサファイアですね。
ですが、時計の風防として使われているサファイアは人工的に合成されたものであり、宝飾品で使われているものはほとんど天然の石です。
つまり、時計に使われているサファイアクリスタルは「基本的には無色透明の合成サファイア」ということになります。
例外としては、例えばロレックスのミルガウスには緑色の合成サファイアが使用されていますね。
サファイアの硬度
私のモース硬度の記事を読んでくださった方はもちろんわかると思いますが、サファイアのモース硬度はダイヤモンドに次ぐ9です!
ダイヤモンドか、同じくサファイアでなくては傷がつかないということです。
理論上は、ダイアモンド・サファイアを含んでいないコンクリートであれば擦り付けても傷つかないということです。
プールに海、どこにでもロレックスを連れていく私もこれはしたことがありません(笑)
ムーブメント内部の軸受けには合成ルビーが何個も使われているので、現代の高級機械式時計には合成コランダム(サファイア・ルビー)が欠かせないということですね!
モース硬度の記事をまだ読んでない方はこちらです!
誤情報はこんな感じです
検索して上に出てくる記事にこんなものがあります
①ダイヤと同等の硬さのガラス
サファイアガラスは前述の通りとても硬く、少しの衝撃でも割れない強さが特徴のガラスです。ダイヤモンドの10の硬度と同等の硬さを持っているので、角や壁などにぶつけた際も割れる心配がありません。誤ってどこかにこすってしまった際も傷に強い強度のあるガラスです。
まず、サファイアガラスはガラスではありません。
そして10というのはモース硬度のことだと思いますが、ダイヤモンドは確かに10ですが、サファイアは9です。同等ではありません。
ちなみにモース硬度に関しては天然であること、合成であることによる違いはありません。
そして最後に、モース硬度は、傷つきにくさの指標で摩擦(引っ掻き)に対しての強さであり、靱性(粘り強さ、割れ欠けに対する耐性)ではありません。
確かにサファイアの靭性はダイヤモンドより高いですが、角や壁にぶつければ普通に欠けます。
こんな情報が企業から出されているのは信じられないですね…
それではまた次回の記事でお会いしましょう!
コメント
んー。間違ってはいないけど、ちょっと誤解を生みそうな表現が…
時計において使われるサファイアクリスタルのサファイアとルビーは確かにコランダムですが、あくまで人工コランダムです。
天然だとか人工だとか書いてないから良さそうにも思えますが、そこは素晴らしい記事だからこそしっかり人工だと記載いただきたい。
あと、この書き方だとサファイアガラスとサファイアクリスタルが別物のように理解できてしまい、ロレックスすげー、という偏った理解が広まってしまいます…。
サファイアガラスという表記が間違っているのであって、他メーカーもサファイアクリスタルですからね…。
とはいえ、素晴らしい記事だと思います。
Kさん
コメントありがとうございます!
開設から2ヶ月、初めていただいたコメントが建設的でかつご指摘も素晴らしいもので非常に感謝しております!
・サファイアクリスタルが人工であること
・サファイアガラスとサファイアクリスタルは呼称が異なるだけで、本質的には同じであること
上記2点のご指摘、その通りですので、記事を修正いたしました。
人工・天然の観点は非常に面白く、人工であることを「人工なのですが、、」と仰る時計店の店員さんが多く、そこに違和感も持っていました。
確かに「希少性」の観点では天然が勝るのですが、合成のものは「化学組成は完全に同一」で「不純物がないので機械にはより良い」という大きなメリットがあることをわかっていない(わかっていればむしろ人工のメリットに言及すべき)ようでした。
この人工・天然についてもいずれ記事を書こうと思っております。
素晴らしいコメントをありがとうございました!
今後もぜひご愛読いただき、またコメントいただけると非常に嬉しく思います!
Alpha